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ピカソセラミック ケンタウロス
最終更新: 2020年7月20日
ギリシャ神話に登場するケンタウロスは上半身が人間で、その下は馬の姿をした種族です。
起源は諸説あるようですが、ギリシャ人が東方の騎馬民族(スキタイ人)が闘う姿を見て生まれたというのがおもしろいですね。東方の馬は少し小さめとのことですので、馬と一体化して勇敢に闘う姿が、目に浮かんできます。
同じく武勇にすぐれていたと言われているラピテス族との戦いでも有名です。
パルテノン宮殿のメトープ(柱の上の小壁面)のモチーフにもなっています。

Lapith fighting a centaur. South Metope 31, Parthenon, ca. 447–433 BC.
好色で野蛮なイメージだけでなく、賢者も多く登場します。
ケイローンはゼウスの息子アポローンから音楽、医学、予言の技を、同じくゼウスの娘のアルテミスから狩猟を学び、ヘラクレスに武術や馬術を教え、アキレウス(アキレス)の教育係でもありました。(アキレスはホメーロスのギリシャ最古の叙事詩『イーリアス』の主人公です。)ケイローンの死を惜しんだゼウスによって射手座が生まれたとも言われています。
ケイローンとアキレウス(アキレス)

CHIRON & ACHILLES
National Archaeological Museum of Naples
Catalogue No.-Type/Fresco, Imperial Roman IV Style
Date/ca 65 -79 A.D.
また、聖アントニオの道案内役として聖書にも登場します。
映画ハリーポッターにも登場し、森でハリー達を助けてくれたり、占い学の先生もしていました。
皆さんの中のケンタウロスはどんなイメージでしょうか。
ピカソの作品にもギリシャ神話をモチーフにしたものが多く見られますが、セラミックに伸びやかに描かれたケンタウロスが、また自由というか独特なのです。岩石や洞窟に刻まれた古代の文字や線絵(ペトログリフ)のようです。

(作品:青龍堂)
洞窟壁画について少し調べてみました。
ピカソが生まれたスペインの地中海沿岸には先史時代(紀元前8000年頃から前3500年頃)の岩壁画が多く残っています。洞窟の自然光の中で描かれた、この生き生きした描写にピカソも影響を受けたのかもしれません。

また、アンティーブというカンヌに近い街にはギリシャ、ローマの遺跡が残っています。ピカソは1946年、海岸線にあるグリマルディ城にアトリエを提供され、数ヶ月創作に励んだそうです。ピカソは地中海を眺めながら、ギリシャ神話を主題とした絵を描いていたのですね。戦後大変落ち込んでいたピカソにとってエネルギーの源になったのだろうと思います。
グリマルディ城は現在ピカソ美術館(アンティーブ)になっています。
その後ピカソは陶芸の街、ヴァロリスに居を構え、ピカソセラミックを産み出して行くのです。(ピカソの見た地中海Sea Urchinでもご紹介しています。)
この美術館にもたくさん展示されています。

(Trip Advisorより)
ピカソのケンタウロス。ただ自由で独特というだけでなく、ピカソの中に先史時代のスペインや古代ギリシャへの敬意を感じました。こういうところが美術の楽しさです。

(銀座室礼最新号より)
作家名:パブロ・ピカソ 作品名:ケンタウロス サイズ:直径39cm 技法:セラミック 限定番号/限定部数:16/250 制作年:1950年
(文/The Blue Box)