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ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 その3 ティントレット

その3 ヤコポ・ティントレット《天の川の起源》1575〜1580年頃


イタリアルネサンス期のヴェネツィア派の巨匠ティントレット。父親が染物屋を営んでいたので「ティントレット(染物屋の息子)」と呼ばれるようになりました。


《天の川の起源》の主な登場人物(神)はギリシャ神話の主神ゼウス、その妻の女神ヘラ、そして赤子のヘラクレスです。

右手に描かれている鷲はゼウスを表す典型的なアトリビュートであり、鷲が掴んでいる蟹のような不思議な物は「ケラウノス」といわれる「雷霆」。この武器はオリュンポス最強と謳われるほど強大なもので、この雷霆をゼウスが使えば世界を一撃で熔解させ、全宇宙を焼き尽くすことができるそう… このシンボルがあれば間違いなくゼウスを表していますね。女神ヘラのアトリビュートは孔雀。右下にいます。

ヤコポ・ティントレット(本名ヤコポ・ロブスティ) 《天の川の起源》 1575年頃 油彩・カンヴァス 149.4 x 168 cm



ヘラは、ゼウスと人間アルクメネの間に産まれたヘラクレスを殺そうと企んでいました。(ゼウスの度重なる裏切りに嫉妬の炎を燃やしていたため)しかし父ゼウスも愛する我が子を不死身にしようと企て、ヘラを深い眠りにつかせ、“不死の効力”を持つヘラの乳をヘラクレスに飲ませようとしました。ところがヘラクレスの乳を吸う力があまりにも強かったため、痛さのあまり払いのけたその時に左の乳房から天空に流れ出た滴が星になり、やがて天の川になったという話が天の川(ミルキーウェイ)の起源とされています。


そして、実はこの作品は現在の正方形のような形ではなく元は縦長で、下部1/3が切り取られているそうです。失われた部分には右の乳房から迸り出た母乳が地上に降り注ぎ百合の花になったという場面…生い茂る草花と百合の花の上に横たわる大地の女神が描かれていた…そうです。

ということで、こちらの作品は正確には“「天の川」と「百合の花」の誕生”を描いた作品だったようです。面白いですね。


本作は鮮やかな色彩が際立っています。ドラマティックでとても動きがあるように感じるのは、登場人物たちが斜めに傾き、天使達も放射線状に描かれているため。中心から外に広がるような躍動感があります。

この作品が本来、壁にかけられたものではなく、天井画であったかもしれないという学説もうなずけます。

斬新でアクロバティックな人物の動きや壮大で独創的な構図を好んだティントレットらしい作品です。



(文/青龍堂 小川)


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