加山又造(1927-2004)は、宗達や光琳の様式を基に、自然の本質を捉え普遍的なイメージとして純化した装飾性の高い作品を生み出し「現代の琳派」と評された日本を代表する画家です。加山又造のことを知っていくと、本業の日本画のみならず、その創作範囲が非常に広いことに驚きます。
独学で銅版画などの版画も一から制作し、陶器類の絵付け、着物や緞帳のデザイン、雑誌や本の表紙や挿絵、ジュエリーのデザイン、さらには航空機ボーイング747LRの内装やBMWの車体のデザインなど、多岐に渡ります。
それぞれのジャンルの創作で個性を発揮し魅力的な作品を作り上げました。
「日本画も他の仕事も本質的には自分にとってすこしも違うところはなく、すべて同じような態度で制作している」と語っていたそうです。
陶芸家である長男哲也氏と(1987年:撮影 齋藤康一氏)
こういった工芸の分野でも、一番長く積極的に取り組んだのが陶芸です。
1968年に陶芸家であり(加山又造の親戚でもある)番浦史郎の元を訪ね、初めて焼き物への絵付けをしました。その後は近くに自身の工房まで建てて熱心に取り組み、陶芸は加山又造にとって創作の大きな一分野になりました。
番浦史郎が成形したものに加山又造が絵付けをする合作で、多くの伸びやかで素晴らしい大鉢や俎皿などが作られました。
「絵付けは成形の素地に呉須、鉄釉で描き、さらに金銀の上絵付も施す。興の赴くまま絵を描いているのが実に楽しい。」(「用の美の世界」第五巻)
「計画的に下絵をこしらえると何故かいい結果が得られない。固くなってつまらないものになる。結局、素材と遭遇した時の即興に随い、自分の内に堆積しているものを、素材の中に静かに吐き出していくのがいいように思う」(「私の絵画観」)
と語り、絵付けの際には下絵は一切施さず、素地の前に長時間座って考えたあと一気に描きあげたそうです。
だからこそ、豊かなリズムを伴った魅力的で生命力のある作品が誕生したのでしょう。
加山又造「鉄赤絵萩文俎皿」26.5×50.8㎝ 1978年 共箱
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こちらの作品も萩が風にたなびいているような自然なリズムがあり、とても心地よい作品です。横幅が50㎝もありどっしりとした風格があります。よくみると葉の葉脈まで感じられます。
この俎皿にお寿司を乗せたら…引き立てあって素敵でしょうね。
本作品は「加山又造全集 第五巻 用の美の世界」(学習研究社)に掲載されています。
(文/青龍堂 小川)
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facebookに寄せられたコメント
「非常に器用で、努力家。創作範囲も凄く広まりましたよね。自分は、裸婦のクロッキーにおいて、加山に影響を受けています。あれを、超したいです❗。」
「加山の筆を造っていらしたお父様。👏💕」
facebookに寄せられたコメント
「加山さんの筆を作っていたのは、私の父です。氏の代表的な描写ハッチングに用いられていたのは、普通とは異なる、特注の面相筆です。作品は、知られていても、道具までは。まあ、道具なのです。NHKでも特集された龍の天井画の最後にめを入れた時の筆も私の父によるものです!!」
株式会社 青龍堂
「たいへん興味深いお話ありがとうございます。
やはり加山先生は画材や道具も全てにこだわられていたのでその全てがあったからこそあのような素晴らしい作品が完成していることに改めて感心致しました。
私共も画材や道具の知識をお客様にお伝えできると作品を見る時により深く味わえて豊かな気持ちになって頂けると感じております。」
「図々しく記ましたが、柔らかな御対応ありがとうございます。父は、ほぼリタイアしましたが、芸大系の作家のものは、父がやっていたもの多いです。やはり作家さんになると特注なものが多かったです。やはり良いものを作る意識の表れだと思います。この時期にいろいろな作家サンの紹介楽しく拝見させて頂いております。頑張ってくださいませ。」