今回は梅原龍三郎の静物画を取り上げたいと思います。
梅原は洋画という枠を超えて日本の伝統的な画材を自由奔放に取り入れ、豪放で華やかな独自の画境を築き上げました。
梅原はフランスから帰国後、日本の風土に合う「日本の油絵」を模索していた頃に熱心に桃山時代の美術を見て歩きました。「当時のものは豪華、絢爛というような特色を持っているが、その反面、少し田舎の寺に見受ける障壁画などには、自然で素朴な、非常に興味を惹かれたものがあった。・・・華やかな中にも、素朴な味のあるものが、よけい親しみを感じる。」「岩絵具は色が生でもいやらしくなくて、色が岩絵具の方が美しい。それは桃山時代の障壁画なんかが非常に色が美しいと思ったから、それで岩絵具を使っている」…梅原は滞欧時の体験でもともと油絵具より日本画に近い発色のフレスコ壁画の色彩が美しいと感じていたようですが、こうして桃山美術をはじめ、大和絵、琳派、南画に親しみ、土俗的でおおらかな大津絵を蒐集するなど日本の伝統美の流れを自覚し大きな関心を持っていました。実はその背景は幼少期にまで遡ります。
梅原は京都の絹問屋に生まれました。
「我家は小さな家許りの芦刈山町で断然大きな家でした。家業は一口に言うと悉皆屋(しっかいや)です。呉服物の問屋から集まる白生地の図案、染色、刺繍などをそれぞれの職先に分配して出来上がったものを所謂得意先に届ける迄の仕事です。この町の大部分の家は私の家の仕事をする家であったから、自然子供心に一町内に君臨する気持ちを持たされておりました。〜」と語っているように、幼い頃から職人たちの描く図案や色彩に触れ、「光琳といえばあるスタイルの梅だの松だのの形容詞として知るようになり」光琳より宗達がいいなどという話も小学校に入る前から聞いていたといいます。
京都という雅な街の雰囲気と生家で培われた感性を元に、ヨーロッパで学んだ西洋画と日本の美を融合するべく、油絵具、岩絵具、金箔、銀箔、金泥そしてキャンバス、間似合紙、金板など、様々な画材を縦横無尽に取り入れました。木々の緑は物質感を持った粗い岩絵具で鮮やかに描き、金泥には輝きを損なわないように卵白で溶いて使うなど、表現したい色や効果に最も適した画材は何かを研究し、特性を見極め、独自の画法を編み出しました。
北京時代には中国色絵磁器の蒐集を始め、梅原様式の代名詞の一つである、“豪華な薔薇と華やかな磁器”のスタイルが生まれるなど、静物画は晩年にかけて数多く描かれました。
梅原の性質がそのまま表れたような、発色の良い明るい色彩、雄大さやおおらかさをもつ作品には今もなお多くの愛好者がいます。
梅原龍三郎《薔薇図(ペルシャ壺)》8号 墨・岩彩・紙 1960年 共シール
東京美術倶楽部鑑定書あり
梅原の代名詞、「薔薇」
量感のある豊かなものを愛した梅原。「薔薇には非常に光を感じる」といい、最も好んで描いたモチーフです。
大胆で素早い筆致が心地よく、鮮やかな色彩と銀色に輝く背景からも梅原らしい豪放さが感じられ、とても存在感があります。マットと呼ばれる縁の部分には色味が響き合う古裂が使われ、作品をさらに引き立てています。
梅原龍三郎《薔薇図》39.0×33.6㎝ 油彩・キャンバス 1952年5月 共箱・共シール
東京美術倶楽部鑑定書あり
梅原が愛した赤が印象的。豪華さと優雅さを併せ持った梅原の優しい「薔薇」
梅原龍三郎《薔薇均窯瓶》46×38.6㎝ 岩彩・紙 1942年 共箱
いわゆる豪華絢爛な薔薇とは異なり、本作は可憐な佇まい。岩絵具が使われており、粗い粒子は色が濃く、キラキラとした鉱物の輝きが味わえます。薔薇や均窯青磁の明るい色合いに心和む作品です。
梅原龍三郎《台鉢の静物》35.7×25.7㎝ 墨・水彩・紙
梅原龍三郎《南瓜と茄子》36×28.5㎝ 墨・水彩・紙
梅原龍三郎《赤絵宋瓷》27.2×16.8㎝ 墨・岩彩・紙(金地)1954年
気負いのないゆったりとした作品達。
素直な制作の喜びや自由な心境が感じられます。
悠々と美の中で遊ぶゆとりやスケール感は梅原芸術の大きな魅力です。
(文/青龍堂 小川)
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Facebookコメントより
「私も好きな作家ですね、日本の華やかし頃でしたね、これは晩年の作品でしょうね。」
Facebookコメントより
「最近は梅原先生の作品見かける事が少なくなりましたね、この時代の画家達は良かったです。🤗」