香月泰男(1911〜1974)は山口県の三隅町に住み続けて制作に励みました。
シベリア抑留という体験が、彼の作品には色濃く表れていると言われていますが、今日はそのバランスを保つかのような、彼の遊び心の作品のお話です。
山口県に住んでいたので、萩焼の坂田泥華や坂倉新兵衛の窯によく足を運び、絵付けなどを楽しみました。皿やお茶盌や陶版など色々と作っています。
こちらは14代の坂倉新兵衛の作ったお茶盌に香月泰男が絵付けをした作品です。
茶盌の裏の高台の横に坂倉新兵衛の印(新兵エ)が見られ、箱書きもあります。裏には香月泰男が書いた箱書きが見られます。
さて、香月泰男の露草、サラッと描かれていますが、なかなかどうしてとても存在感があると思いませんか?
香月泰男は花屋さんで売っているような花はほとんど描いていません。昆虫や野に咲く野草に、儚くも健気に咲き誇る生命の息吹を感じ、その小さき者達の美しい生命力を愛情を持って描いています。
壮絶なシベリア抑留体験のある香月泰男。生きることのありがたさや命の大切さを想う気持ち伝わってきます。
今ちょうど露草の季節です。
なんと可憐で美しいのでしょうか。
露草の和名の由来は諸説ありますが、朝露を帯びながら咲く様子、朝咲いて昼には萎む朝露のように儚い様子から名付けられたと言われています。
香月泰男の作品に触れるたび、身の回りの草花の健気さや美しさに目がいきます。
家に戻り、お茶も点ててみました。
萩の白っぽい釉薬に、お抹茶の緑がとてもよく映えますね。朝露のように爽やかなお抹茶を頂き、心が澄んで、落ち着きます。こういう時間を大切にしていきたいです。
(文/青龍堂 店主)
作品情報
作家名:香月泰男絵
14代坂倉新兵衛作
萩茶盌「露草」
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