シベリアに抑留されていた香月泰男は、その雪の白と光のない黒の世界に登る太陽を描きました。深い失望感や希望から隔絶された心情を「黒い太陽」に、戦争の虚しさを「灰色の太陽」に託して描いています。太陽そのものの崇高なまでの美しさも表現しています。シベリアシリーズとして、香月泰男は晩年まで「太陽」を描き続けます。
香月泰男のシベリアシリーズ 1961年「黒い太陽」
「雲間の太陽」という作品は、そんな太陽の光が雲の間から射しています。希望の光を表現しているようです。香月独自のこの描き方は「着色素描」と名付けていて、茶色味かかった紙の下地に薄く墨を塗って、その上にクレヨンやパステルを使って描かれています。その薄墨が油性のクレヨンを弾くのを楽しんでいるかのようです。
(文/青龍堂 店主) 作品情報
香月泰男「雲間の太陽」
39.3×27.2cm
香月泰男鑑定登録会鑑定書あり
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