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執筆者の写真thebluebox

白い雀のお話 速水御舟の絶筆

更新日:2021年1月22日

絶筆とはその人の生涯において、最後に書き残した文や書画のことです。


速水御舟で言えば、1935年(昭和35年)2月に描かれた「盆梅図」(未完)です。速水御舟は同年3月20日に40歳の若さで亡くなるので、Felix M.Bush collection に所属されているこの未完成の作品はまさに絶筆です。この絵の下図も同コレクションに納められています。

盆栽に仕立てられた紅白の梅の木に雀が2羽とまっています。


下図でははっきりと雀が描かれているのに(写真上)、本画の雀は白く塗りつぶされています。(写真下)



「盆梅図」(未完) 下絵




「盆梅図」(未完) 本画



最初、絶筆なので制作の途中で体調が悪化して、雀は完成しなかったのかと思っていました。


それが、ご遺族の話によると、この作品には面白い曰くがあるそうなのです。 近所の住人が飼っていたこの雀は、最初は普通の雀に見えますが後に白くなるという世にも珍しい雀だったそうです。その噂を聞きつけた御舟は是非にと、お手伝いさんに借りてこさせて、下図を書きました。 ところが、お手伝いさんが誤ってその雀を逃してしまったそうなんです。たいそう揉めてかなりお金も払う羽目になったそうです。 そんなこともあって本画の雀は、白く塗りつぶしたのではないかと言われています。


今回、青龍堂はこの絶筆のもう一つの下図を入手しました。

盆梅のみが描かれた下図は新発見なのです。最初から盆梅のみを描いていたのか、それとも雀を逃した後に盆梅だけにしたのかは定かではありませんが間違いなく絶筆の下図です。


こういった出会いにはワクワクされられます。


(文/青龍堂店主)


商品情報 作家名:速水御舟 作品名:盆梅図 サイズ:64cm x42cm 紙 墨 水彩 制作:1935年 吉田耕三鑑定

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