今回ご紹介するのは速水御舟の描いた雲中供養菩薩(国宝)です。
平等院鳳凰堂中堂の壁に懸けならべられている52躯の菩薩像で天喜元年(1053)に制作されたものです。
各像はいずれも輪光を負い、飛雲上に乗ってさまざまの変化にとんだ姿勢をとります。5躯は僧形で、他は菩薩形です。それらはいろいろな楽器を演奏したり舞を舞ったり、合掌したりしています。
今回の作品は琵琶を持った像です。
その菩薩像を黒と茶系の線で繊細に極楽浄土の主である阿弥陀如来を讃嘆供養する姿を表現しています。
ちなみに、明治初年、文明開化や廃仏毀釈の波によって荒廃した寺院や古美術品の保護に、政府は動き出しますが、文部官僚としてその実現に奔走したのは岡倉天心で帝国博物館(現在の東京国立博物館)の整備や古社寺保存法(現在の文化財保護法)の制定などその礎を築いています。さらに天心は、明治31年創立の日本美術院に国宝彫刻修理の部門を設置して、損傷した文化財を数多く保護し、雲中供養も修理しました。
交流のあった速水御舟はこの縁で雲中供養菩薩を描いたのかもしれません。
(文/青龍堂店主)
速水御舟「雲中供養菩薩」
28×40.3cm 鑑定あり
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