菱田春草(1874-1911)は36歳の若さで亡くなりましたがまさに天才でした。
師の岡倉天心も追悼文の中で、春草は「不熟」の天才であったと語っています。
「落葉」(1909)や「黒き猫」(1910)など近代絵画史に残る名作を残しました。
その頃新たに金屏風への試みも始めます。
今回ご紹介する作品は金地に描かれた柳と鷺です。
空気感を追い求めてきた春草が「落葉」では無限に広がる空間性を表現しました。
そのあと今度は金箔の無背景の中に何かを追い求めていたのでしょう。
金地に墨の濃淡で柳を表現してそのしなやかさが伝わってきます。
その奥に1羽の飛び立つ鷺が金地の見る場所によって変化する光の反射の中に象徴的に映ってきます。
制作年代は落款の字でわかりました。
金地の作品は屏風以外はほとんど類例がなく大変希少な作品です。
この空気感伝わりますでしょうか?素晴らしいですね。
(文/青龍堂店主)
菱田春草 「柳に鷺」
21㎝×18㎝
金地・墨・彩色
菱田千代箱
東京美術倶楽部鑑定
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