小出楢重(こいで ならしげ)の、この作品。
なんだか画家の想いがこもっているように感じます。
これをみると、ただ1916年作婦人像としかわかりません。
いやいや、ただの婦人像ではない気がします。
やっぱり画家の想い入れが感じらるのです。
1916年は、2年前に東京美術学校を50名中5席の成績で卒業したが、
なかなかうまくいかずに地元大阪に帰り、その後京都の天彩画塾に学んでいる時でした。
翌年の1917年に同じく天彩画塾で学んでいた和田重子と結婚します。
この作品は奥さま和田重子に出会った頃なのだと思います。
同じ画塾で学びながらも心を寄せていた時のなんとも一途な雰囲気が出てますね。
この3年後には初期の代表作〈Nの家族〉を完成させます。
眉の感じなど非常によく似ています。
ただこの頃の作風はセザンヌの影響もありかなり存在感のある描き方なので
少しデフォルメされていると思います。
そこでこの時のお写真を見つけました。
やはり今回のお作品は妻重子ですね。
小出楢重が生涯大切にする妻に恋焦がれていた時の貴重な作品に出会えました。
(文/青龍堂店主)
小出楢重 「婦人像」
カルトン油彩
18.4㌢×14.2㌢
鑑定あり
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