密教の世界では、宇宙の中心であり真理そのものであるとされている大日如来ですが、その中でも最高位にあたるとされるのが一字金輪(いちじきんりん)です。一字金輪像は秘仏とされ、息災や長寿を祈る際に使用されました。
奥州藤原氏三代・秀衡の念持仏だったと伝えられている平泉中尊寺の一字金輪佛頂尊は白い肉感的な特徴で知られており、「人肌の大日」とも呼ばれています。
平泉中尊寺の一字金輪佛頂尊
奥村土牛が中尊寺の一字金輪佛頂尊を描くようになったのは、尊敬する小林古径が亡くなった後、68歳の頃です。
亡き師古径のイメージと大日如来を重ねていたのでしょうか。彼は題名を「浄心」とつけています。
(「浄心」は山種美術館第二会場に展示中です。2024年2月4日(日)までです。)
土牛にとって一字金輪を描くことは、祈ること、そして魂を浄化することだったのでしょう。「心の仏像」を描いたとも言われています。
毎日毎日、写生に没頭したという土牛の心情はどのようなものであったのでしょうか。
この素描の土牛の崇高な魂を感じてみてください。
奥村土牛「素描 一字金輪坐像」 45.1×36.4cm 東美鑑定評価機構鑑定書あり
山種美術館 癒やしの日本美術 2024年2月4日(日)まで
(文/The Blue Box)
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