藤田嗣治の甲虫。甲虫と蜂が見事な筆遣いで描かれています。
ふと気づくと何も描かれていない部分、余白にも目がいきます。
この絵の影の主役はこの銀箔の余白だと言ってもいいでしょう。
この余白が見るものの想像力を掻き立ててくれるからです。
甲虫は蜂を追いかけているのだろうか。
この2匹は何かの象徴だろうか。
藤田が日本にいた頃に描いたとすると甲虫は強い男子の象徴だろうか。
巣に帰る蜂。蜂は必ず帰ってくるという意味もあるから
当時声を大にして言えなかった、大切な人を送り出す時の祈りだろうか。
視線を余白に休まていると、様々な思いが浮かんでは消えていきます。
(文/The Blue Box)
作品情報
藤田嗣治 銀地(紙)・墨
26.8㎝×24.0㎝
東美鑑定評価機構
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