今回ご紹介するのは長谷川潾二郎の「ミモザ」です。
写実的でありつつも幻想的な独特の画風はとても魅力的ですが、とにかく遅筆で寡作(筆が遅く作品が少ない)、その上、画壇からも距離を置き、孤高とも言える脱俗の制作態度を貫いたため、これまでその画業が明らかにされることはありませんでした。
ただ近年再評価された《猫》が、あまりにも有名になりました。
この作品の有名なエピソードがあります。
猫は愛猫の太郎。実物を眼の前にしないと描けないという長谷川は筆が遅く、この《猫》に片方の髭がないのは、「太郎がこんな恰好で寝るのは年に2回だけ」といっているうちに、死んでしまったからというお話です。
この希少な作家の作品ですが、1点描くのに数年かかったというだけあって見ていると
じわ〜っと引き込まれる不思議な感覚になりますね。
この魅力、実際にご覧頂けたら幸いです。
(文/青龍堂店主)
長谷川潾二郎 「ミモザ」
44.5㌢×30.0㌢
キャンバス・油彩
1932年
鑑定あり
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