2月8日の読売新聞の一面に、偽版画についての記事が掲載されました。
「事件の経緯は、大阪の業者が数年前から偽物の版画を工房に作らせていた。その後、古い人気の版画が複数出回ることに疑問を抱いた複数の業者が調査して判明した。その数は800点以上に及ぶ。」
業界内の出来事ですので早くから知っていたのですが、大変胸を痛めております。偽物版画が一掃される事を願っております。今わかっている作品を掲載しておきます。
もし万が一お持ちのお作品がありましたらお声がけください。ご協力させて頂きます。

今後は東京美術倶楽部を窓口にしてこの事件の当該作品の真贋の判定をすることになっております。
エッチング(銅版画)などは版画としての味わいがあり、繊細さの出る作品や木版などの独特の風合いの作品は芸術としての評価は高いと思いますが、今回のシルクスクリーンなどはやはり芸術と言うよりも印刷物に近い物だと思っているので、私たちは取り扱いはしません。このような版画が、流通に於いて高い地位を占めたのは日本人の「みんながいいと言っているものはいい」「流行り物に弱い、流行に遅れたくない」という国民性の表れのような気がしてならないのです。
本当にいい作品というのは、みんながいいと言うものではなく心をグッと掴まれたりするものであり、その人その人で感じ方が違うはずです。
私たちも作品を取り扱う時はいつも、作品とは本来一点モノで、作品の内容や状態もちろん真贋も含めて(鑑定書などはありますが)必ず真剣勝負で相対しております。その中でいい作品を見つけていくのです。
しかし、版画は複数あるという認識がその鑑識眼を曇らせ、安易に流通を優先してきた盲点をつかれたのかもしれません。
版画の信頼回復を目指すのはなかなか困難になると思いますが、むしろ原点にかえって、美術品一点一点に真剣に向き合ってその価値を伝えていく仕事を業界としても真摯にひたむきにしていかなければならないと思います。
もちろん弊社も真贋はもちろん作品の優れた価値を皆さまにお届け出来る様に日々の研鑽を忘れずに進んでまいりたいと思います。
(文/青龍堂店主)
Comentarios