top of page
執筆者の写真青龍堂 小川

美術探求《湖畔の道》はどこ?

更新日:2022年1月29日


梅原龍三郎《湖畔の道》


発色の良い群青の岩絵具や金泥が美しい本作。ここは、どこの湖畔なのでしょうか。


額裏に画家本人が書いた、いわゆる共シールが貼られています。

湖畔の道(レトレーザ)1958年8月10日とあります。


確かその頃に梅原は南仏からイタリアを訪れていたはずですので、イタリアのストレーザのことではないかと推理しました。


調べてみると、やはりその年の8月に梅原はその地を訪れていました。


ストレーザのマジョーレ湖畔沿いの写真に作品によく似た風景がありました。



左上矢印の白いホテル(グランドホテル デ ジル ボロメ)から描いたのかもしれないと想像を膨らませていた時、ふと、女優の高峰秀子の著書にマジョール湖の記述があったことを思い出しました。


本を開いてみると、なんと予想は的中🎯


この辺りは「コモ湖」をはじめとして、「ガルダ湖」「ルガーノ湖」「マジョール湖」と、やたらに湖が多い。小一時間も走って、私たちはようやくマジョール湖畔の「グランドホテル・エ・レ・ボロメーズ」という立派なホテルに到着した。〜

タクシー代を払って、ホテルに駆け込んだ私たちを、梅原御夫妻は廊下の真ん中に立って待っていてくださった。案内された私たちの部屋には、先生のお心入れの、ウイスキーの瓶とエビアン水、そしてチーズやクラッカーまで用意されていた。

(『私の梅原龍三郎』高峰秀子著より)



左:梅原龍三郎 右:高峰秀子

(『私の梅原龍三郎』より)


Grand Hotel Des Iles Borromees


《湖畔の道》は、風景の角度といい、このホテルから描いた可能性がかなり高いです。

作品に関する謎解きはとても心躍ります。


高峰秀子夫妻との親しい交流、そして梅原の心配りや優しさが伺えるエピソードも素敵ですね。




(文/青龍堂 小川)


作家名:梅原龍三郎 作品名:湖畔の道 サイズ:31.8 x 22.8cm 墨、岩彩、紙 制作年:1958年 東美鑑定評価機構鑑定書あり








閲覧数:195回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Commenti