梅原龍三郎《湖畔の道》
発色の良い群青の岩絵具や金泥が美しい本作。ここは、どこの湖畔なのでしょうか。
額裏に画家本人が書いた、いわゆる共シールが貼られています。
湖畔の道(レトレーザ)1958年8月10日とあります。
確かその頃に梅原は南仏からイタリアを訪れていたはずですので、イタリアのストレーザのことではないかと推理しました。
調べてみると、やはりその年の8月に梅原はその地を訪れていました。
ストレーザのマジョーレ湖畔沿いの写真に作品によく似た風景がありました。
左上矢印の白いホテル(グランドホテル デ ジル ボロメ)から描いたのかもしれないと想像を膨らませていた時、ふと、女優の高峰秀子の著書にマジョール湖の記述があったことを思い出しました。
本を開いてみると、なんと予想は的中🎯
この辺りは「コモ湖」をはじめとして、「ガルダ湖」「ルガーノ湖」「マジョール湖」と、やたらに湖が多い。小一時間も走って、私たちはようやくマジョール湖畔の「グランドホテル・エ・レ・ボロメーズ」という立派なホテルに到着した。〜
タクシー代を払って、ホテルに駆け込んだ私たちを、梅原御夫妻は廊下の真ん中に立って待っていてくださった。案内された私たちの部屋には、先生のお心入れの、ウイスキーの瓶とエビアン水、そしてチーズやクラッカーまで用意されていた。
(『私の梅原龍三郎』高峰秀子著より)
左:梅原龍三郎 右:高峰秀子
(『私の梅原龍三郎』より)
Grand Hotel Des Iles Borromees
《湖畔の道》は、風景の角度といい、このホテルから描いた可能性がかなり高いです。
作品に関する謎解きはとても心躍ります。
高峰秀子夫妻との親しい交流、そして梅原の心配りや優しさが伺えるエピソードも素敵ですね。
(文/青龍堂 小川)
作家名:梅原龍三郎 作品名:湖畔の道 サイズ:31.8 x 22.8cm 墨、岩彩、紙 制作年:1958年 東美鑑定評価機構鑑定書あり
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