花浪(はななみ)の里とし聞けばもの憂(う)きに君ひきわたせ天橋立
和泉式部は楊貴妃や小野小町と並び称される美女といわれ、日本を代表する女流歌人。千年が過ぎても彼女を超えるような人は多くはいません。
そんな恋多き彼女にとっては、丹後の生活は物足りないものだったのかも知れません。
藤原保昌とは再婚です。また、祇園際の山鉾(やまほこ)のひとつに「保昌山(ほうしょうやま)」があります。
一目惚れした保昌に「紫宸殿の梅」を折ってきてくれたら結婚すると式部が言いました。紫宸殿(ししんでん)とは帝のおわすところ。天子様の庭の花を盗人せよとお願いしてきたのです。梅を一枝折ったものの、発見され、矢を放たれながらもようやく逃げもどった伝説がテーマになっています。
和泉式部の歌があり、雪舟の天橋立を思わせる風景があり、藤原保昌の逸話ありと
なんとも色々楽しめて平安中期の雅な文化を感じさせます。
(文/青龍堂店主)
富岡鉄斎 「保昌赴丹図」
絹本彩色 共箱
133㎝×56.5㎝
明治25年
大阪美術倶楽部鑑定あり
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